あっくんはね、あずきって言うんだ本当は
あっくん(小豆/あずき)
男の子。
2006年春ごろにやってきた。
彼は千円札と共にやってきた。
まだ手のひらに乗るくらいの大きさだった。おばさんの手に掴まれた彼は、散々人の間を連れまわされ、怯え、恐れ、諦めて、だらりと手足を垂らし虚ろな眼をしていた。
そのおばさんは貰ってくれる人を探して彼を手に握ったままショッピングセンターを歩き回ったのだと言う。そして最後にたどり着いたのが、私の店だった。
尻尾はないと言われた。
ないはずはない。
彼の長く美しい尻尾は怯えきった彼の腹にぴたりと沿って収められていた。
青い瞳が美しい子猫だった。
幼い頃は鼻が真っ黒であんこが好きだったので、小豆と名付けられた。
大きくなって鼻の色はピンクに変わり、あんこなど食べなくなったが、遠浅の海の淡いブルーのような瞳は相変わらずに美しい。
彼の母親代わりとなったおくさん(私の母である)のことがずっと大好きである。